ストレスチェック制度の義務化

概要とポイント

ストレスチェック制度とは?

2015年12月1日より、事業所における「労働者へのストレスチェック」が義務化されました。厚生労働省によると、

  • 労働者の2人に1人が、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じていること
  • これらの労働者に対し、心の健康維持と増進を目的として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成 18 年 3 月 31 日 付け健康保持増進のための指針公示第 3 号。以下「メンタルヘルス指針」という)を公表し、事業場におけるメンタルヘルスケアを実施してきた
  • しかし、それ以降にも「仕事による強いストレスが原因による精神障害を発病」する労働者は増加傾向にある

という現実があります。

こうした背景もあり、厚生労働省では「労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題」と捉えています。こうした動きにより、法改正がなされた結果、「心理的な負担の程度 を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という)及びその結果に 基づく面接指導の実施等を内容としたストレスチェック制度(以下「ストレスチェック制度」という)」がスタートすることになりました。

メンタルヘルスのレベルとしては、大きく3つに分けられます。

  • 一次予防:メンタルヘルス不調となることを未然に防止する
  • 二次予防:メンタルヘルス不調 を早期に発見し、適切な対応を行う
  • 三次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する

このうち、今回義務化となったストレスチェック制度は、主に一次予防の強化を目的としています。

事業者側に求められること

厚生労働省が公表している「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」によると、事業者側が行うべきこととして、次の事柄が明示されています。

1.ストレスチェックの実施労働者に対して、定期的にストレスチェックを実施することが事業者の義務となります。また、本人にその結果を通知し、自らのストレスの状況について気付きを促します。

2.面接指導の実施
・ストレスチェックの結果、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になります。その結果、必要があると認めるときは、労働者のストレスを軽減するために、就業上の措置を講じる必要があります。

3.集団分析の実施
・職場の一定規模の集団(部、課など)ごとのストレス状況を分析し、職場におけるストレス要因を評価します。その結果を踏まえて職場環境を改善につなげることが事業者の努力義務になります。

4.労働者に対する不利益取扱いの防止
・面接指導の申出を理由として労働者に不利益な取扱いを行うことは法律上禁止されます。

ストレスチェック制度の流れとしては、以下のようになります。

具体的には、事業者、ストレスチェック制度担当者 (衛生管理者、事業場内メンタル ヘルス推進担当者など)、実施者(産業医など)の3者が一体となり、体制を作り上げていく必要があります。

ただし、これらをすべて事業者内で行う必要はありません。ストレスチェック開始前の「ストレスチェック制度の実施責任」と「方針の決定」、また「ストレスチェック制度の実施計画の策定」と「実施の管理」に関しては、事業者の責任において行う必要があります。しかし(委託先との守秘義務契約などが必須となりますが)、「ストレスチェックの実施」および「調査票の回収、データ入力等の実施者の補助業務」は、外部への委託も可能です。

ストレスチェック制度 実施ポイント

ストレスチェック制度は、結果を本人に通知することで労働者が、「自分が今、どれくらいのストレスを抱えているか」「その原因は何か」という点を自らが気づくことを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低下させることが目的です。一方で、検査結果を集団ごとに分析し、「職場環境の改善」や「労働者の身近な存在である管理職のスキルアップ」に繋げることでストレス要因そのものを減らすことも意図しています。
さらにその中で高リスクの者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する取り組みです。

ストレスチェックの頻度としては年1回以上となっており、定期健診と同時に行うことも可能です。しかし、ストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票を別紙にするなど、受検者が健診とストレスチェックの目的や取扱を認識できるよう、区別を明確にする必要があります。

実際のストレスチェックの頻度としては、年に1回以上となっていますが、一般健康診断と同時に行う場合には、いくつかの注意点があります。

  • ストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票を別紙にする
  • 質問票への記入後、ストレスチェックに係る部分と一般定期健康診断に係る部分を切り離す
  • Web調査票など、ICT技術を用いる場合は、一連の設問であっても、ストレスチェックに係る部分と一般定期健康診断に係る部分の区別を明らかにする

などです。

対象となる労働者は、一般定期健康診断の対象と同様、「常時使用する労働者」となります。

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