放置した場合のリスク

検査結果を見て、何をするべきかを考える

◆検査結果の「基準値」とは何か

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各検査項目には、「基準値」と呼ばれる範囲があります。これは、健康な人の検査データを元にして決められています。具体的には

  • 20歳~60歳くらいの「健康な人」のデータを元にする
  • 全データを、数値の低い方から高い方に順番に並び替える
  • このうち、下限の2.5%、上限の2.5%のデータを除外する
  • 残りの95%の人のデータが含まれる範囲を「基準値」とする
  • という方法で、決められています。

     
     
     
     
     

    分かりやすい例として、体重で考えてみましょう。

    基準値の範囲

    健康な人が200人いたとします。体重の順に並び、軽い方の5人(2.5%)と重い方の5人(2.5%)を除外します。残りの190人(9.5%)の体重が、基準値の範囲になります。
    基準値の範囲の中で一番体重が軽い人(200人中6番目に軽い人)の体重が43㎏、基準値の範囲の中で一番体重が重い人(200人中6番目に重い人)の体重が85kgとすると、基準値は、「43㎏~85kg」となります。

    健診結果の中で、「基準値」から少し外れていても問題がないことがありますし、「基準値」内におさまっていても問題があることもあります。これまでの経過や他のデータとの関連性などを、総合的に判断する必要があります。



    ◆総合的に判断された「結果報告書」から考えるリスク

    最近では、健診を受けた当日に、簡易的な「報告書」を受け取れることがあります。しかしこれは、あくまでも各検査結果に対して、基準値から外れているかどうかを見ているものであり、医師などによる総合的な判断結果とは違うことが多いようです。 健診から数週間~1か月くらい経つと、総合的な判断を加えた、「結果報告書」が送られてきます。健診を行った機関によって、多少の違いはありますが、おおよそは以下のような判定区分が明記されています。

    表の変更2

    一般健診の場合と特定健診・特定保健指導の場合を比較しても、多少の違いはあります。
    また、健診を行った機関や結果報告書を作成した機関(いずれも医療機関を含む)でも、判定区分には多少の違いがあります。

    では、それぞれの判定には、どのようなリスクが隠れているのでしょうか。

  • A判定(異常なし)だった場合
  • 現在のところ、特に問題はないようですが、今後も正しい生活習慣を維持していきましょう。生活習慣の乱れなどがあると、B判定以上に移行することも珍しくありません。

  • B判定(軽度異常)だった場合
  • 通院や精密検査を受ける必要はありませんが、健康に気遣う生活が必要です。C判定に移行する前に、生活習慣の見直しを行いましょう。

  • C判定(要経過観察)だった場合
  • 生活習慣の見直しをはかり、数か月~半年くらいの間、様子を見てください。生活習慣改善に向けた「指導」を受けることも必要です。改善がみられなければ、受診して治療を行う必要があります。

    例えば、次のような検査結果だったとします。
     HbA1cが6.0%と、基準値よりも少し高い
     空腹時血糖値も尿糖も正常範囲内
    このような結果の場合、検査前1,2ヶ月間、血糖値が高い時間が続いていた可能性があります。この様な状態ですと、今すぐに糖尿病と診断されることは少ないのですが、血糖を上げてしまうような生活習慣(不適切な食事、運動不足、ストレス)が無かったか振り返り改善する必要があります。

  • D判定(要治療、要精査)だった場合
  • 医療機関を受診する必要がある状態です。精密検査が必要であったり、すぐに薬物治療が必要な場合もありますのでなるべく早く受診をして下さい。

  • E判定だった場合
  • 現在、すでに何かしらの治療を受けている状態です。このまま治療を続けて下さい。

    ◆結果報告書を活用しましょう

    健診後の「結果報告書」は、受け取ったら終わりではなく、しっかりと活用していくことが必要です。

  • 検査数値の経年変化を見てみましょう
  • 「結果報告書」はファイルなどに綴じて、大切に保管します。前回、前々回の結果と何がどう変わってきているのか、自分の体の変化を確認するチャンスです。

  • 「総合判定」をじっくり読むこと
  • 「結果報告書」には、総合判定が書かれていると思います。これは、1つの検査項目だけではなく、さまざまな検査結果を複合的に判断されたものです。肥満・高血圧・脂質異常・高血糖など、動脈硬化リスクがどれくらいあるか、なども分かりますので、自分の体の状態をチェックしてください。

  • 早期発見・早期治療のチャンス!
  • 要治療/要精査と診断された方は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。早期発見できれば、早期治療につなげるチャンスです。

    ◆判定結果を放置すると…

    例えば、B判定なら自覚症状はありませんし、C判定の場合でも、自覚症状がないと受診しないケースがほとんどです。しかし、C判定以上になると、生活習慣によってはあっという間にD判定になることもあります。検査結果によっては、1年間放置するだけで、一生薬を飲む生活になることもありますし、場合によっては、入院や手術などの治療が必要になることもあります。

    健診とは、もともと自覚症状のない「健康と思われる人」の中から、病気の可能性がある人をふるい分ける「スクリーニング」検査です。自覚症状がないうちに病気を発見し、必要な治療を行うことが目的ですから、少しでも気になるところがあったら、医師や保健師に相談してください。また、症状がなくても精密検査や治療が必要という判定が来たら、すぐに医療機関を受診してください。

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